書斎で巡る名山、待望の復刻
防長百山
安倍正道著
A5判238頁函入・3000円(〒340円)
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『防長百山』のこと
マツノ書店 松村久
早いもので、安借正道氏の名著「防長百山」(初版1977年)を小社で刊行して、もう15年になる。安倍氏は車を持っておられないので、本書を作るとき、毎週のように私がアッシー君で同行したこともあって、たいへん印象に残っている。
日本アルプスなどの有名な山と違い、県内の山は登る人が少ないため、どこに行ってもヤプだらけ。ヤプこぎを嫌っていてはどうにもならない。
安倍氏はペンネームを矢部公義(やぶこぎ)というだけあって、ヤプにはめっぼう強い。
旧海軍で鍛えた根性か、それとも単なるやせ我慢か、どんなヤプの中でも、刺に引っかかれても、決して「痛い」とは言わず、ぴしょ濡れになっても、なぜか傘をささない。飲酒登山も特技で、朝、私の車に乗ると、すぐに飲みはしめ、酒の勢いで山項を極め、固形物は口にせず、昼飯の代わりにまた一杯。帰りのヤプこぎでは、酔っばらってカメラを無くすことも一再ならず・・・。
その代わり山に行かない日は禁酒を守り、自宅で中学生に英語と数学を教えておられた。塾の雰囲気はまことに伸ぴやかで、子供たちにまじって、犬や猫まで一緒に座っていることもあった。
当時、一県内の山を一人でくまなく踏破し、格調高い文章と写真にまとめあげた本は、全国的にもほとんどなかった。哲学者・登山家として著名な串田孫一氏は、喜んで序文を寄せてくださり、香月泰男氏の絵で大扉を飾ることもできた。その後、各県で類似の本が出版されてきたが、本書を超えるものは出ていない。
そして今も、県内では数多くのハイカーが、この「百山」を一つずつ登っている。「防長百山」を探す人はあとを絶たない。自然破壊の進む中、後世に残す資科としても貴重なので、このたぴ復刻することになった。
(92年4月10日朝日新聞山口版「ほんの周辺」より転載)