戦前・戦後を通じ唯一の史料に基づく「久坂玄瑞伝」
巻末に年表学者としても知られる妻木忠太の90頁におよぶ詳細な「年譜」を付す
久坂玄瑞 附・久坂玄瑞年譜
 武田 勘治 (年譜= 妻木忠太編)
 マツノ書店 復刻版 *原本は昭和19年
   1998年刊行 A5判 並製(ソフトカバー) 函入 524頁 パンフレットPDF(内容見本あり)
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■ 武田勘治著『久坂玄瑞』は、昭和十九年に道統社から発行されたものである。著者の武田勘治は明治三十年、大分県杵築市に生まれ、吉田松陰など勤皇家の伝記や、教育に関する著作を数多く発表している。
■ 久坂の評伝は、その絶大な人気にもかかわらず、きわめて少ない。いずれも昭和十年代に刊行されており、次の三冊である。
 香川政一著『久坂玄瑞』(含英書院、昭和十四年)は物語調の伝記である。萩の郷土史家である香川は、地元の強みを発揮して多くのエピソードを集めているけれど、虚実の境がはっきりしないことが惜しまれる。
 和田健爾著『久坂玄瑞の精神』(京文社書店、昭和十八年)は最初の久坂評伝である。しかし当時の時局を如実に反映し、戦意高揚をあおっている個所が非常に多く、今日では読むに堪えない。
■ 戦後のまとまった評伝としては、長文連『奇兵隊死士久坂玄瑞』(三一書房、昭和四十年)と池田諭『高杉晋作・久坂玄瑞』(大和書房、昭和四十」年)が出たくらいである。いずれもユニークな視点での研究だが、武田の著作のように正面から久坂の生涯をとらえた伝記は今もって現れていない。
■ このたび復刻される武田勘治著『久坂玄瑞』は、史料をもとに淡々と書き進められた、忠実な久坂玄瑞伝である。刊行から半世紀を経た今日なお復刻されて読みつがれる価値を持つ伝記といえよう。
■付録の「久坂玄瑞年譜」は、数多くの維新志士の伝記を手がけ、防長史料の篤実な蒐集家として知られる妻木忠太編『久坂玄瑞遺文集』上巻からの転載。非常に密度の高い貴重な史料である。巻末には一坂太郎氏の解説「久坂玄瑞と関係文献」
■二著とも刊行されたのが終戦直前で、紙不足は極まり、仰刷技術も低劣なのが惜しまれる。なお今回の復刻に際してB6判の原本をA5判に拡大した。


『久坂玄瑞』 略目次
序 説
1 久坂の生立
 @久坂の家 A 九州路の旅

2 吉田松陰と久坂
 @ 松陰と久坂の議論 A 松下村塾時代の久坂

3 久坂の東遊


4 西洋学所の諸生久坂

 @ 松陰の再獄と久坂 A 勤学と同志の指導 B 萬延元年

5 新鋭の闘士(再度の東遊
)
 @ 再び江戸へ A 活発な運動開始 B 参観と和宮御降嫁との阻止運動

6 蹶起

 @ 失意の帰国 A 脱藩義挙の計画 B 義挙の失敗 C 長井雅楽弾劾(公武合体論の排撃) D 久坂が妻へ與へた手紙

7 攘夷の魁

 @ 攘夷運動の推進 A 異人撃殺計画 B 御楯組血盟 C 夷人館焼討 D 佐久間象山招聰の使

8 文久三年の活躍

 @ 京都の形勢と久坂の活動 A 長藩の攘夷実行と久坂 B 御親征運動と久坂 C 八・一八政変と久坂 D 長藩の言ひ分 E 久坂の逸話

9 元治元年

 @ 長藩の雪冤運動と久坂 A 長藩の出陣 B 禁門の変