あらゆる大久保伝の原典にして最高峰!
大久保利通伝 全3巻
 勝田 孫弥
 マツノ書店 復刻版 *原本は明治43年
   2004年刊行 A5判 上製函入 総計約2400頁 パンフレットPDF(内容見本あり)
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『大久保利通伝』 略目次
上 巻
第一篇 幼少時代
@清水谷 A利通の郷里と其家系 B利通の両親 C利通の幼時 D時代と精神の修養(其一) E時代と精神の修養(其二) F子老の遠島 G謹慎中の利通

第二篇 勤王時代(其一
@齊彬襲封 A利通父子の赦免 B有志者の出府及藩政革新の計画 C齊彬の経編策 D安政の大獄 E齊彬の死と薩藩の形勢

第三篇 勤王時代(其二)
@薩藩志士の突出 A久光藩政を改革す B利通出府を計る C利通志士の勃興を制す D忠義の参府と桜田事件

第四篇 勤王時代(其三)
@藩論の一致を計る A久光上京に決す B利通の上京 C久光上京前の形勢 D久光の上京 E久光の入京と寺田屋事件 F大原勅使の東下 G勅使の東下と幕政改革 H勅使の帰京と薩長の不和 I久光の帰国

第五篇 勤王時代(其四)
@京師の形勢一変す A利通の上京 B将軍の上洛 C久光の上京 D将軍の帰東 E薩英戦争 F京師の事情 G久光の上京 H生麦事件の終局 I公武一致論

第六篇 勤王時代(其五)
@藩論一変 A京師の騒乱 B利通藩政を改革す C長州征討 D長州再征の議及五卿事件 E長州再征の議及外船入摂

中 巻
第七篇 勤王時代(其六)
@薩長連合と五卿事件 A長州再征と薩藩出兵の拒絶 B王政復古の議 C四侯の国是論 D王政復古の準備 E王政復古

第八篇 在朝時代(其一)
@大革新後の形勢 A戊辰の破裂 B政府の状況と遷都の議 C徳川征討と対外問題 D親征 E徳川処分 F江戸在勤 G車駕東幸 H箱館戦争

第九篇 在朝時代(其二)
@版籍奉還と利通の帰藩 A車駕東幸と利通の大廟参詣 B政府の改革と国是決定 C政府の改革利通待詔院出仕と為る D英国皇子来航 E論功行賞及遷都 F利通木戸と帰藩す G政府の改革と民蔵分割論 H大変革及廃藩置県の準備 I大変革及廃藩置県国

下 巻
第十篇 在朝時代(其三)
@全権大使欧米派遣 A欧米巡回中内地の事情 B征韓論と内閣の破裂 C征韓論後の事情 D利通内務卿と為る E佐賀の役 F台湾事件 G久光の建言及利通の辞表 H台湾征討と北京談判

第十一篇 在朝時代(其四)
@大阪会議 A明治八年の政変 B聖上利通の邸に幸す C聖上東北巡幸 D利通と勧業 E政府の改革と地租軽減 F西南戦争前の事情 G西南戦争の発端 H西南戦争 I利通と鹿児島県 J戦後の事情と利通一の経編策 K遭難結論



 勝田孫弥『大久保利通伝』の復刻に寄せて
   国士舘大学文学部教授 勝田 政治
 2003年11月から12月にかけて、NHKの歴史番組「その時歴史が動いた」は、「日本の歴史を動かした」と考えられる人物についてのアンケートを実施した。その結果、大久保利通は第17位となっている(NHKのホームページ)。同時代の明治維新期の人物で、大久保より上位にランクされているのは、第2位の坂本竜馬(第1位は織田信長)、第9位の西郷隆盛、第10位の徳川慶喜、第11位の勝海舟、第12位の新選組(グループだが)、第16位の吉田松蔭である(大久保の次の第18位に高杉晋作がおり、伊藤博文が第22位、木戸孝允は第34位となっている)。
 こうしたアンケートに見られるように大久保利通は、「専制主義者」・「官僚政治家」・「冷血漢」・「非情」などというマイナスイメージが先行しているのか、いつも坂本や西郷らの後塵を拝しているのである。しかし、大久保は明治維新という一大変革を最も主体的に担った政治家である。幕藩体制の崩壊から近代国家の形成という全過程にわたって、つねに中心的位置を占め続けた人物として、大久保以外に誰を挙げ得るのであろうか。大久保は再評価されてしかるべき人物である。「維新の元勲、明治政府の建設者」と的確に評価している勝田孫弥『大久保利通伝』は、大久保の事績を理解するにあたって古典的位置を占める名著である。

 『大久保利通伝』は、1910(明治四三)年から翌1911(明治四四)年にかけて刊行された、大久保の最初の伝記である。著者の勝田孫弥は、1867(慶応三)年に大久保と同じ鹿児島県に生まれ、明治法律学校(現明治大学)で法律を学んだ後、明治維新史研究に転じて1894(明治二七)年から1895(明治二八)年に『西郷隆盛伝』(全五巻)を刊行した。そして、『大久保利通伝』を著した直後の1911(明治四四)年、維新史料編纂会が設立されると編纂官、さらには委員(役員)となって明治維新史料の蒐集と整理にあたり、1941(昭和一六)年に亡くなっている。このように勝田孫弥は、明治中期から昭和初期にかけての代表的な明治維新史研究家なのである。

 『西郷隆盛伝』は、「根本史料を用いた」明治以降の人物の伝記として「最初」の書物であり、「実証的な人物伝として注目すべき」ものであり、薩摩藩中心ではあるが「幕末・明治初年史の体系を新しく構成」した業績として、「エポックメーキングな基礎工作」であると評価されている(大久保利謙『日本近代史学の成立』)。『大久保利通伝』もこの実証史家勝田孫弥の手になるものである。復刻にあたって『大久保利通伝』の有する価値をいくつか指摘し、推薦の言葉としたい。

  第一は、実証主義が貫かれた最も精緻な大久保の伝記ということである。上巻が691頁、中巻が876頁、下巻が827頁、総計2394頁に及ぶ大著である。日記や書簡を丹念に調べ、それらを初めて史料として用いて全生涯の足跡を克明に追っており、これを凌駕するような評伝は現在においても存在しない。誕生から王政復古までの時期が全十一篇中七篇までを占めているように、幕末期の記述は詳細を極めている。
 第二は、大久保以外の史料も広く蒐集・紹介しており、明治維新史料集となっていることである。島津家文書・三条家文書・岩倉具視文書・伊藤博文文書・黒田清隆文書・吉井友実文書など「引用書目」として、一五七の「書目」が掲げられている。現在でも刊本に収められていない文書が含まれており、明治維新史研究者にとって必携の書となっている。また、当時の状況を伝える貴重な写真を収めていることも、史料集としての価値を高めている。
 第三は、政治家大久保像を打ち出したことである。自由民権運動や士族反乱という反政府運動のなかで大久保は、「有司専制」・「専制主義者」として批判されてきた。そうした中、「明治の大政治家」であり、「実に政治家の典型と称すべき」であると大久保を評価し、末尾の一文は「政治家として最も責任を重んじ、進んで国難に当たりし忠誠に至りては、古今多く其比を見ざるなり」と結んでいる。その後の池辺三山『明治維新 三大政治家』から、戦後歴史学における政治家としての大久保研究の基礎を提供している。
 第四は、大久保の伝記にとどまることなく、薩摩藩を中心とする一つの明治維新史研究となっていることである。維新研究史上の観点から検討に値する古典であり、史学史研究の対象としても貴重な業績である。

 混沌として逼塞感の強い現代日本において、大久保の事績から学ぶことは多い。今回の復刻が大久保研究を前進させ、さらには再評価の気運を高めることを期待してやまない。研究者のみならず、明治維新に関心をもつ人々に広く推薦したい一書である。
(本書パンフレットより)