激動と混乱に満ちた終戦直後の真相を掘り起こす
激動二十年 山口県の戦後史
 毎日新聞社編
 マツノ書店 復刻版 ※原本は昭和40年
   2001年刊行 A5判 並製函入 204頁 内容見本PDF
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『激動二十年・山口県の戦後史』について・・
■本書の原本は、毎日新聞西部本社管内の各県版に昭和39年11月から40年6月まで一斉連載された特別企画「激動二十年」を取りまとめたものです。
■太平洋戦争の終了後二十年。激動と混乱と苦渋に満ちた終戦前後の真相を掘り起こし、記録した貴重な記録です。この時期は明治維新以来の大激動期にもかかわらず、類書が殆どなく、今や当時の庶民史を知るための貴重な一冊です。
■目次からもおわかりの通り、非常に内容充実した本です。でも刊行後三十六年もたち、軽装本のため見かけが悪くなり、文字は小さく、行間が詰み過ぎているため読みにくく、目の疲れる本です。
■復刻に際して、B6判の原本をA5判に拡大復刻することにより、それらの欠陥を完全に解決しました。




 さあ出発しよう自分探しの旅
   俳優・明治大学特別招聘教授 原田 大二郎
 瀬戸内の午後のやさしい波が海岸線にひたひたと打ち寄せる。春には、風に吹かれた満開の桜が、吹雪となってあたりを舞う。私の故郷、山口県に住む人々は誰もが底抜けに明るくて屈託が無い。
 一度、アメリカ合衆国を相手に大きな戦争を戦って負けた昭和二十年の日本は失意のうずまく廃墟と化した。明治維新から七十七年、ほとんどの対外戦争をまがりなりにも勝ち抜いてきた日本人には「戦争に負ける」ということが、よく理解できなかったであろう。占領軍とGHQ(連合軍総司令部)という言葉に抵抗できるものは誰もいなかった。
 岩国に駐留していた米軍の海兵隊は、みんな赤鬼のようだったし、少年時代、父と一緒に旅行した東京で、MP(米軍憲兵)に呼び止められ、GHQの建物に連行されていく父の、かぼそいうしろ姿を、不安でいっぱいになりながら見送ったことを、昨日のことのように思い出す。
 本書は庶民の歴史である。国を守るために必死になって戦った人々。恐怖の占領軍を相手に学校を守りぬいた人々。県の主権を守ろうと必死の抗議をした人。ついにはその熱意が相手にも通じて占領軍が折れる。
 正しいと思うことを正しいと主張することは、本当に大事なことだと教えてくれる。
 「関の小平」「八海事件」「宇部の殺人鬼」。我々の記憶から消え去ろうとしている事件の数々。人々が力を寄せ合って、厳しい状況を切り拓こうとしているときに、とんでもない悪事を働く人間も、またいる。防波堤として沈めた軍艦を金鋸で切り取っていた男たち。防府天満宮の出火の原因となった賽銭泥棒。「恋が浜」脱線事故で乗客の荷物を持ち逃げしたとんでもないやつら。
 毎日新聞西部本社の編纂した『激動二十年・山口県の戦後史』は、復興日本の庶民の歴史を、記者が自分の足で歩いて書きとめた貴重な記録である。昭和十九年から三十九年まで、ちょうど、私の青春時代と重なって、興味深い。
 このたびマツノ書店から拡大復刻されることになった。実に喜ばしい。「温故知新」という。自分の故郷の歴史を知るのは、現在の自分を知ることでもあるのだから。 
(本書パンフレットより)