八江萩名所図
木梨恒充
B5判上製函入
別冊とも全2冊・分売不可
(平成2年刊)

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内容見本
【PDFファイル】



刊行に際して
@「A6判・和本七冊」の原本を、「B5判・洋本一冊」に拡大し、まとめました。A6判(文庫本の大きさ)では、せっかくの絵が小さすぎて生かされていないし、また和本の分冊は、保存・使用の両面にわたってたいへん不自由だからです。
 ふつう「名所図会」はB5判のものがほとんどなのになぜかこの『八江萩名所図画』だけは小型本なのです。しかし、萩市のある銀行では、本書の絵を引き伸して、大きなカレンダーに使用したこともあるくらい、この木版画はしっかりしていますので、拡大したことによって、絵は生き、本としての価値もはるかに増しています。

A本書は、代表的な萩の地誌でもあります。しかし文章には万葉仮名や漢詩などが多いため、たいへん読みにくく、しかも難解です。それでこのたびの復刻に際しては、松本二郎氏による「読み下し」および「注釈」を別冊(B5判一五〇頁)として添付しました。松本氏は御年91才の今なおかくしゃくとして活躍しておられる、萩の長老、生き字引的な郷土史家です。
B入手困難であった『八江萩名所図画』は、このように、「拡大」と「別冊」とによって、県内唯一の「名所図会」として、また貴重な郷土史料として、新しく生まれ変ります。
「八江萩名所図画」復刻刊行に寄せて

萩市郷土博物館副館長 近藤隆彦
 萩は江戸時代の城下町の姿をいたる所に残している全国でも数少ない歴史の町である。
 そんな萩の江戸時代末頃の姿を精密に描いて木版刷りにした本が「八江萩名所図画」という小型本である。
この本は当時、全国的に流行し、各地の名所や風景、沿革などを絵入りで描き刊行された「名所図会」と同種のものである。著者は萩藩士木梨恒充で天保五年に起草したが、安政二年に急死し、発刊にはいたらなかった。のちに同藩士山県篤蔵によって、明治二十五年に改訂増補して刊行された。萩に関する地誌らしい本で断片的な小著は数種あるが、この本ほど系統的に秩序正しく整然としたものは見あたらない。

 内容は、最初に長門の国の由来から萩城の創建を説明し、ついで城下の史跡、名勝、寺社並びに風俗、伝説などについて四季の順序にしたがい記述し、城下町の繁栄を七冊にまとめている。またこの本の価値を高めているのは、実地の写生にもとづく精密な鳥瞰図を版画にし、文章では表現しきれないものを絵によって説明している所である。見て楽しむという点に特色をおいた見せる地誌ということができる。

 萩の歴史を知る上で貴重な本であることは早くから衆知のことで、その再版を望む声も多かったが、原本は木版の手刷りである為、その機会がなく今日にいたっていた。今回マツノ書店から、B5版に拡大し、見やすくして発行されるという。たいへん嬉しいニュースである。

 本文は万葉仮名で書かれている所が多く、漢文、漢詩などの挿入部分とともに難解であったが、在萩の郷土史家の長老松本二郎先生による別冊の解説書が添えられ、万葉仮名は現代風な読みに、漢文・漢詩は読み下しに、難解な語句は解釈が加えられ、平易に読みやすいような配慮がされている。
 萩の町を散策するとき、この本を片手に現在の萩の姿と比較してみるのも興味深いのではなかろうか。