明治維新の本質に迫る学会待望の根本史料!
奇兵隊反乱史料
脱隊暴動一件紀事材料
石川卓美・田中彰編
A5判上製函入・250頁
ホームページ
明治維新の真相を解明する貴重な史料
専修大学教授・遠山茂樹
 農・工・商の民衆をふくめた「草莽」(そうもう)の力が、明治維析の実現にはたした役割は大きい。その「草莽」のもっとも組織された典型が、長州藩の奇兵隊以下の諸隊であった。
 しかし幕府がたおれ、戊辰戦争がおわると、維新政府は、「草莽」の組織を解体し、その民衆的要素を排除する。それは新政府が藩閥専制権力として成立する過程と相表裏して、多くの藩で見られた現象であった。長州藩諸隊がもっとも典型的な「草莽」の組織として活躍しただけに、その解体は、もっとも悲劇的な様相をしめした。
 1869(明治2)年から翌年にかけての長州藩諸隊の反乱、いわゆる脱隊騒動は、「草莽」の歴史的性格、つまり明治維新と民衆とのかかわりをさぐる絶好の研究課題である。いいかえれば明治維析の歴史的性格を解明する鍵を提供する事件である。それだけにこれまで歴史学界は注目してきたし、見解=評価のちがいも生れている。
 しかしこの事件の研究はなお未開拓である。肝心な史実についてわからない点が多い。事件は複雑であり、その性格は急速に変化している。

 奇兵隊史料については、早く『奇兵隊日記』が公刊されており、山口県文書館の毛利家文庫には貴重な未刊史科が残されている。だがこの史料群を読みとり整理するための道具となる、骨格的な史料集がなかった。このため史料にもとづいた研究は遅々としてすすまなかった。本史料集はこの欠を補う学界侍望のものである。
 本書の刊行が明治維新研究の今後の前進にはたす役割は、実に大きい。もともと編年体に配列されていたうえに、編者は利用者の検索に便利になるようさらに周到に編集している。読者は、事件の刻々の展開をとおして、具体的な史実のもつ多様さ、意外さにおどろく、そうした研究の面白さを存分に味わうにちがいない。