山口県の人脈が
日本近代史発展の原動力となっていた時代に
活躍した1300余名の大人物誌
近代防長人物誌
全3巻
B5判クロス装上製函入(約2000頁)
(昭和62年刊)

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内容見本
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刊行に際して
▼明治大正期の山口県人の中から、政治、軍事、産業、教育、芸術、宗教、医学など各方面に活躍した人物1300余名を選び、その系譜、出生、略歴、業績、エピソード、性格、家族等を平易な文章で記述した史的人物伝。関連人名を含めると、その数はゆうに5000名を越える。

▼もちろん維新史上の人物も、付随して多くとり上げられており、「明治維新人物誌」としても貴重である。

▼全国的にみて、各県別の人物誌のほとんどは藩政期の人物を扱ったもので、明治時代に刊行されたものが多い。いくつかの県では、最近編集された人名事典もあるが、本書のように、明治大正期だけの、詐細な事典は全国にも例がない。

▼B5判2千頁の中に、人物伝のほか顔写真1千点、本人の筆跡620点、書画の写真220点、建築物などの写真130点を掲載。そのほか会社の決算書、営業報告書、社史なども含む、多彩な山口県近代史資料である。

▼座右の読み物としても第一級である。本書を繙けば、近代の防長人は官・軍に偏することなく、経済や文化の方面においても広く全国に進出していたことがよくわかる。山口県を知るためにも必読の書といえよう。

▼本書の初版は『現代防長人物史』と題し、天地人の3巻に分けて大正6年、東京の発展社より刊行されたものである。以後70年をへた今日、本書を復刻するに際して、時代的な誤解をさけるため、書名の一部を改め、新たに「人名素引」を作成し、別巻として付した。

▼日本近代史の究明に、あるいは山口県出身者のルーツ探索に不可欠の稀覯本です。



日本近代史の基本資料
紀田順一郎
一つの時代、一つの地方の歴史は、人物を通して知るのが最も捷径であるが、そのための適切な資料が直ちに得られるか否かが問題である。さいわい近代の山口県には、研究者のためにたいへんすぐれた一文献がある。それが本書『近代防長人物誌』(『現代防長人物史』改題)である。

人名事典のスタンダードである平凡社版『大人名事典』を見ていると、防長関係の人物に関しては参考文献として『現代防長人物史』を掲げていることが多い。それだけでも重要な基本書であることを察するに十分であるが、実際に繙いてみると、維新史上の人物から官界、学界、実業界、教育界、文化界にいたるまで、あらゆる分野を網羅し、しかも記述は精細をきわめた、たいへんな労作ということがわかる。

さすが、維新を主導した長州だけに、豊富な人材を輩出しているが、大正中期の刊行になる本書の特色は、幕末から明治初期にかけて活躍した人々のほとんどが鬼籍に入り、次代に引きつがれている状態を反映していることだろう。たとえば吉田松陰の家は長妹の夫の二男、吉田庫三(横須賀中学校長)に継がれたことが、庫三の項でわかるし、大村益次郎の跡は子の寛人を経て養嗣子(旧山口藩主毛利元徳の男、徳敏)に継承されたことがわかる。また徳敏は西園寺公望の養嗣子八郎の兄にあたるという。

言論史上重視すべき法学者江木衷は、現在二、三の人名事典によって辛うじて事績を知ることができるのみであるが、本書では文章を再録し、筆跡を掲げているばかりか、「才色兼備」の夫人の肖影まで載せるという徹底ぶりである。図版が多いのも本書の特色で、鉱山王の豪壮な邸宅図などは当時のこの種事業がいかに巨万の富をもたらしたかを窺うに足る。読んで飽きないのも本書の美点である。

著者の井関九郎は本書のほかに『大日本博士録』なども編纂し、これらも人名事典の基本資料とされているが、まことに生涯を人物誌集成一筋に打ちこんだ得がたい存在である。今回のマツノ書店による復刻版は、詳細な索引を補ってさらに閲読に利便ならしめるという点でも待望のものだが、これを機会に全国の学校・図書館・研究者などが参考図書として一本を備えるよう、心から推賞したいと思う。
(本書刊行時のパンフレットより)